研究概要
私の研究では、小中学生を対象に作文調査を行い、その作文データを分析することを行っています。作文調査は主に日本で行っていますが、海外でも行うことがあります。特に、子どもの読み手意識やコミュニケーション方略が文章中にどのように表出されるかという観点で作文分析を行い、子どもの思考や発達の実態に迫ろうとしています。子どもの言語発達が見えてくると、国語教育で何をどのように教えるのかもまた変わってきます。
また、国語教育の国際比較研究では、主に英国と日本の比較を行っています。言葉も教育システムも全く異なる両国ですが、子どもの言語発達や、国語の教え方には共通点も見られます。国際比較によって、当たり前と思われていたことに新たな価値を見いだすことも少なくありません。
中でも作文指導に焦点を当てた国際比較を行い、従来にない新しい指導法を検討しています。それを大学の授業で試行し、小中学校での指導法に援用できないか探究しています。
教育・研究活動の紹介
上記の研究だけでなく、栃木県内の小中学校の校内研修での指導助言、教員研修における講話講師なども行っています。現職の学校の先生方が国語の授業についてどのようなことに関心を持ち、また課題としているかということを共有し、授業研究を通じて一緒に解決法を探っています。これまでに、「実践的なコミュニケーション力の育成」「対話的な学習活動」「書く力を育てる授業づくり」「低学年の国語科授業のポイント」「情報活用能力を育てる国語科授業」といったテーマで、講話や授業研究、教材開発などを行ってきました。
また大学では、教員採用試験に向けた論作文対策も行っています。学校教員に求められる資質能力を学生が自分の中に見出し、言語化し、論理的に展開していくまでのお手伝いをしています。
今後の展望
現在は、教えるべき作文技術を明確にした作文カリキュラムと評価法の開発を行っています。これまでに得られた子どもたちの作文を言語発達の観点から分析し、またレトリック研究の知見を援用することで、段階的で系統的な作文カリキュラムを開発したいと思っています。
社会貢献等
これまでに、宇都宮市の独自教科であった「会話科」のカリキュラム開発を行いました。宇都宮市教育委員会から依頼を受け、言語発達の観点から実践的コミュニケーション力を育成することを目指した小学校用カリキュラムを開発しました。また、大学生と協働して動画教材も作成しました。それらの成果は、宇都宮市の全小学校にDVD資料として配布されました。
今後も、小中学校における校内研修での指導助言、教員研修における講師などを引き続きお受けする予定です。また、研究の成果を学校現場に還元できるよう、学校の先生方と交流していきたいと思っています。