研究概要
1000年以上昔に作られた文字資料を基に、日本語、特に日本語の文法が辿ってきた歴史を再構築するべく、研究に取り組んでおります。特に可能表現の歴史を今までしつこく研究してきました。最近は、可能表現がその他の文法的な意味に拡張していく過程があることを見出し、その変化の在り方を明らかにするべく取り組んでおります。実は現代方言で生じている現象を深く知ることが、この問題の解決につながるかもしれないという見通しを得たため、方言も同時に研究しています。
先行研究を精読したうえで、実際に過去の文献資料に目を通し、研究対象としている用例をひたすら集めることから始めます。最近は「コーパス」といって、膨大なテキストデータから必要な用例を一気に抜きだす技術が作られましたが、過去の文献の全てがコーパス化されているわけではありませんし、目下私が取り組んでいる課題は、コーパス化されていない資料に目を通すことで初めて解決できるものだと考えています。とにかく文献を読むこと、そのうえで過去の文献に現れる用例(実例)を証拠に、あれこれ論じていきます。同時に上でも述べたように、方言調査にも手を伸ばしはじめています。方言には、過去の中央語(主に京都)で起こった現象が数百年の時間差で起きている現象があります。場合によっては、方言を調べることで過去の中央語で何が起こったか、どうして起こったかを考える重要なヒントを与えてくれます。
教育・研究活動の紹介
歳も近い分、学生らの悩みをよく理解できると感じることが多いです。若いうちはぐいぐいひっぱるタイプの教員ではなく、一緒に走るタイプの教員でいたいと思っています。
研究では、歴史文献と方言を同時に扱えるところが強みになると思っています。それぞれを極めたプロパーは学会にたくさんいらっしゃり、そこに割って入るのはなかなか難しいと感じますが、二つを横断的に研究してつなげるタイプの研究者はさほど多くないと思います。そこに、自分の研究活動のオリジナリティを求められると考えます。
今後の展望
伝統的な方言の衰退が著しい今、方言の記録と録音保存が喫緊の課題と感じているので、向こう数年は方言研究に重心を移しつつ文献にも目を配る、というスタイルでいきたいと思っています。
社会貢献等
某映画製作会社の作成する時代劇映画のセリフ(方言)監修を担当しました。
一昔前は、特に文系研究者は研究室に籠って社会に触れずに籠りきる「象牙の塔」的なところがありましたが、いまや一般社会へのアウトリーチが必須となってきています。そうした情勢の変化を理解しているつもりですので、研究の成果を学術界だけでなく一般社会に向けても積極的に発信していきたいと思っています。