研究概要
自然現象や社会現象を支配する法則は,数式(例えば,微分方程式)を用いて記述することができます。自然現象や社会現象の未来について,その数式を用いて数学的に研究する理論を力学系理論といい,私は,その数式が表す現象の未来が予測可能であるための必要十分条件について研究しています。より具体的には,擬軌道尾行性や測度拡大性による系の微分幾何学的特徴付けについての研究です。
教育・研究活動の紹介
数学の研究成果が論文として専門雑誌に掲載されると,掲載と同時に他の多くの数学者により,その研究成果が改良され新たな展開が生まれます。最近はインターネットの普及により,その速さにはすさまじいものがあり,数学は日々進化し続けています。数学は紙と鉛筆があれば研究できるような印象がありますが,それは事実ではありません。私は,最先端の理論に遅れず研究を推進するため国内外で開催される研究集会へ積極的に参加し,自身の研究について発表を行い,世界的な専門家からの評価を受けることで更なる研究の推進に取り組んでいます。
学生の卒業研究などでは,関数族や微分方程式系の安定性と分岐について,幾何学的・解析的・統計的視点から指導しています。
今後の展望
擬軌道尾行性や拡大性の概念はカオスの概念(定義)の構成要素とも深い関係があります。私の研究では,その概念についての研究を測度論的な視点,すなわち「観測可能の視点」から微分幾何学的に展開しようとするもので,そこで得られた研究成果はカオス理論研究の応用面においても大きな寄与が期待できます。
社会貢献等
下の図はバーンスレーのシダ(フラクタル)と呼ばれていて,4個の関数(数式)を何回もくり返し用いてコンピュータで作成したものです。コンピュータ技術の発達により,このように自然界に実際にあるものを,具体的に数式を用いて描くことが可能です。この図形は,力学系のアトラクタと呼ばれるものの1つであり,数学を学習することの重要性や意義を視覚的に理解できます。フラクタル理論は,高等学校で学ぶ数学の知識で十分理解可能なことから,今まで栃木県内の高等学校や中学校でフラクタルについての講話をしてきました。