研究シーズ集

工学部

准教授 寄川 弘玄よりかわ ひろはる

基盤工学科・情報電子オプティクスコース・寄川研究室
寄川 弘玄
キーワード

グラフェン,カーボンナノチューブ,量子ドット,表面状態

分野

物性物理学

研究テーマ

・低次元物質の電子物性
・共鳴 X 線非弾性散乱スペクトル
・ポーラスシリコンの発光スペクトル

所属学会等

日本物理学会,米国化学会

研究概要

固体中の電子状態を理論的に研究しています。電子は制限された空間で特徴的な振る舞いをすることが知られていますが、物質・結晶構造によっては、驚異的な性質を示すことがあります。格子欠陥や表面などで生じる状態に注目し固体内部との関係を研究しています。具体的には、グラフェンやカーボンナノチューブなどの炭素原子による低次元の物質中の電子の振る舞いや、量子ドットと呼ばれる微小なクラスターによる発光現象、結晶のバンド構造の情報を含む貴重な共鳴x線非弾性散乱法によるスペクトルの解析などに注目しています。特に、2次元物質であるグラフェンは、軽量かつ強靭という機械的な特性をもち、伝導電子の移動速度の速さなどの話題性もあり、さらに単純な組成と構造ながら明瞭な表面状態を示すなど、今後の電子材料として非常に高いポテンシャルを持つ物質です。研究は、数値計算やシミュレーションを中心に、特異な現象の可能性の探査や実験結果の解析・再現などを目指しています。最近はできる限り単純化したモデルでバンド計算とクラスター計算を併用し電子構造を解析することを考えています。 

教育・研究活動の紹介

以前に比べ、誰もが情報を入手しやすくなった反面、評価手法に合わせた思考や回答で済ませて完了し、新たに自分で考えることが減ったように感じられます。新しい現象ばかりでなく、古くからある問題についても、今のひとが考えれば、新しい見方ができ、両者を参照して考えるというのが研究とか教育ではないかと思います。既に高く評価されている手法を知っていることは、やろうとしていることが説明できるという点で評価を受け易いですが、創造力という観点からはどうでしょうか。〇〇力というような尺度が設けられる度にその対処法を身に付けるプログラムを用意することが良い教育・研究活動なのかと疑問に思うことがあります。我々の分野では、説明できるなら既にその研究は完了していることが多い。まだ説明できない段階にこそ、そのひとの個性や想像力が活きる。そのような視点から、教育・研究に取り組んでいます。下図は、三角形状のグラフェンの電子の表面状態。

今後の展望

結晶中における電子のバンドエネルギーと分子やクラスター中における分子軌道のエネルギー準位について、様々な具体例を調べ、有効な分類・判別方法などについて考えたい。