研究概要
眼球運動や瞳孔反応の計測に基づいて,ヒトの注意・心理・心の特性の推定に関する研究を行っています.
【視運動性眼振を用いたヒトの注意位置推定】
視野に持続的な運動物体があるとき,視運動性眼振(OKN)と呼ばれる眼球運動が発生します.当研究室では,視線とは異なる位置に注意を向けた場合でも,運動物体の方向と対応したOKNが発生することを明らかにしました.このことから,OKNを分析することで,ヒトがどの運動物体に注意を向けているか推定することができ,車両運動中の事故防止や高齢者・障害者のためのコミュニケーション支援などに寄与します.
【視運動性眼振を用いた自閉症スペクトラム傾向の推定】
自閉症は注意機構や眼球運動の制御に障害があることが知られています.当研究室では,ランダムドットで構成される運動物体を呈示し,OKNの物体を追従する速度が遅いほど,自閉症スペクトラム傾向(AQ)が高いことを明らかにしました.これにより,OKNを分析することで,ヒトの自閉症スペクトラム傾向を簡単・短時間で推定できます.
【絵画観察時に生起する感情と瞳孔反応との関係】
当研究室では,絵画鑑賞中,絵画に対してポジティブな印象を感じるほど,瞳孔が縮小することを明らかにしました.また,鑑賞中の眼球運動の分析から,絵画の顕著性と感情評価には関連が見られませんでした.これらのことから,絵画から生じる感情は絵画の高次特徴量に基づいていることが示唆されます.
教育・研究活動の紹介
眼球運動(特に視運動性眼振)・瞳孔反応・心拍変動など生理的指標を用いた客観的データに基づいて,ヒトの心理特性の解明を目指しています.
今後の展望
今後は眼球運動・瞳孔反応を用いた芸術の評価・解明,個人の視覚特性に適応した視覚支援メガネの開発などにも取り組む予定です.
社会貢献等
特開2018-194931(瞳孔径の変動に基づく情報入力装置)