研究概要
「フードシステム複線化のための食農システムの構築とフードポリシーに関する実証的研究」:
消費者の食料調達の手段は、スーパーからというのが一般的です。しかしここ20年ほどは道の駅など、農家さんから直接仕入れたものを直売する方式が大変人気です。人気の理由は、新鮮でかつ生産者がわかる安心・安全というメリットのほかに、生産地やその周辺で売り先を確保することで、地域の農業の持続可能性に貢献できるという面があります。このような地域で食(消費)と農(生産)を結ぶローカルフードシステムは、将来の食料安全保障を確保する観点からも非常に重要性が増しているのです。また、経済効率を追求した、スーパーにつながるグローバルな流通で生じている、食の安全性や長距離輸送による環境への負荷、食料獲得に生じる経済や地域格差など多くの問題を解決するためにも、ローカルフードシステムの構築が急務です。
さらに、新型コロナのようなパンデミックや戦争など世界的な危機が起きると、グローバルなフードシステムがストップするリスクがあることがコロナ禍で明らかになりました。一方コロナ禍でも、ローカルフードシステムが有効に機能したことが世界中で報告されています。また、局地的な災害等で地域にダメージが生じた場合は、グローバルフードシステムで補完することが可能です。このようなフードシステムの複線化の視点からフードシステムを再構築していく必要性やその具体的な手段について研究しています。
教育・研究活動の紹介
西山研究室の学生が中心となって、益子町の農村地域にある小さな空き家を改修し、「里山キャンパス益子家」での取り組みを行っています。地域内外の方々との交流だけでなく、当事者の視点で農村地域の課題解決を考え、実践していくアクションリサーチの研究拠点としても活用しています。空き家の改修の他、空き家前に耕作放棄となっていた棚田を再生しゆうだい21の無農薬栽培、地域食堂やマルシェの開催などを行いながら、農村地域の農業生産や農あるくらしへの理解を深めています。
今後の展望
今後は、農村と都市の持続的な関係を作ることも目標として研究を進めています。現在は分断されている農村と都市を別個に捉えるのではなく、人や物や情報が循環する連続体として捉え、共生する関係に変えることが、それぞれの課題を解決し、持続可能な社会の構築につながると考えています。その試みの一つとして、東京都墨田区の住民が生ごみをコンポスト化し、それを東武線でむすばれる栃木県足利市の農村地域で活用し、その成果を墨田区に還元するという構想が実現に向けて進みつつあります。
社会貢献等
農林水産祭専門審査委員や県や自治体等の評価委員等を務める一方で、益子家を拠点とし、さまざまな企業や地域の団体と連携関係を作りながら、地域資源の管理や活用を通して、地域資源の価値を高め、農村地域が住み続けられる場所になるように、社会実装を通した取り組みにも力を入れています。