研究概要
主に国際連合の安全保障体制について研究しています。国際関係を考察する際に、国際連合のような制度に注目して、武力紛争の際に最も犠牲となる割合の高い一般市民をどのように保護していくかについて考察してきました。
2011年の原発震災後は、人間の安全保障と原発事故被害の関係についても研究を続けています。いずれの研究課題についても共通する「問い」は、戦争や原発事故のような国家的危機に際して、なぜ政府は一般市民の保護を優先せず、被害を切り捨ててしまうのか、という問題です。「国家は国民を守らない」という問題が過去から現在にかけて続いていることを学ぶことによって、現代社会の何が問題であり、どう改善していくのか、一人ひとりの市民に何ができるのかについて、初めて考えることができると思っています。
教育・研究活動の紹介
「戦争と平和」に関する問題について考える授業の一環として、宇都宮市内の戦争遺跡を訪問するスタディーツアーを、市民団体の協力のもとに実施しています。また東電福島原発事故が提起した問題を、宇都宮大学にある5つの学部から教員が集まり、文系理系を越えて考える「3.11と学問の不確かさ」という授業も、2012年以降毎年続けています。これらの授業の際に、研究成果である原発事故の被災状況等を報告するシンポジウムや勉強会を開催し、一般公開もしてきました。さらに戦争の被害であれ、原発事故の被害であれ、当事者の証言を読む作業を授業に取り入れています。公の歴史の中では記録されにくい被害者の声を聴きとるために必要であると考えているからです。
今後の展望
原発震災から時間が経過するにつれて、事故と被害の風化が進んでいます。しかし残念ながら、原発事故の終息は見通すことができず、現在も被害が続いていることを、教育と研究の両分野で今後も発信していきたいと思います。
社会貢献等
「安全保障関連法案(安保法制)」「集団的自衛権」「核抑止論」「テロ防止」など、安全保障に関するキーワードが、日本のニュースを騒がせる時代になっています。これらの言葉の意味は何であるのか、どのような主体がいかなる目的でこれらの言葉を使っているのか、実際に実施されてきた政策や国際的制度とどのような関係があるのかなどについて、地域の市民団体やサークル活動関係者、公民館等での勉強会や講演会の講師を務めてきました。
さらに、東電福島原発事故後に栃木県に避難していらした方々、そして栃木県北地域において放射能汚染問題に苦しんでいる被災者の方々の聞き取り調査を行い、証言集にまとめて大学の教材としているほか、メディアへの情報発信を続けています。