研究概要
近代のドイツ哲学、とりわけヘーゲル(G. W. F. Hegel, 1770-1831)の倫理思想と社会思想を研究しています。また近年は、哲学対話の教育的意義、徳福一致の可能性の問題、といったテーマにも取り組んでいます。
教育・研究活動の紹介
<研究活動の紹介>
研究活動としては、目下、次の二つのテーマに取り組んでいます。
・ヘーゲルの社会哲学の共和主義的側面に関する研究
共和主義とは、権力の腐敗を防ぎ、安定した社会秩序を構築するために、法にもとづく客観的制度の確立と市民の公共精神の涵養を重視する政治的立場であり、古代のギリシャ、ローマ以来の伝統があります。近年、多くの国で民主主義の機能不全が指摘される中で、共和主義を再評価しようとする機運が高まっていますが、こうした現代の動向を視野に入れつつ、ヘーゲルの社会哲学を共和主義の思想的系譜の延長上に意義づけ直すという課題に取り組んでいます。
・哲学対話と徳の教育に関する研究
近年、哲学対話を教育活動のなかに取り入れる動きが広がりを見せていますが、この研究では、徳認識論やシティズンシップ理論を手がかりとしながら、哲学対話が参加者のうちにどのような資質を育むのかを探究しています。
<教育活動の紹介>
現在の学校教育では「主体的で対話的な深い学び」の促進が重視されており、これから教員を目指す皆さんには、たんに既存の知識やスキルを教えるだけではなく、子どもたち自身の主体的な探究活動を上手くファシリテートする力が求められています。そうした力を身につけるためには、まずもって、教員養成の段階で濃密な探究活動を数多く経験する必要があります。このような認識のもと、私の授業では、たんに哲学史上の学説や議論を紹介するだけではなく、受講生自身がそこから自発的な問いを見いだし、他のひとと対話をしながら自らの考えを深めていけるよう、ディスカッションの機会を多く設けています。
今後の展望
専門的な研究は上記のテーマを中心に進めていきますが、多くの人に読んでもらえるような一般読者向けの哲学書も執筆したいと考えています。また、社会活動の面では、地域の人々が誰でも気軽に集い、語り合えるような、対話の場を定期的に設けたいと考えています
社会貢献等
哲学対話を通じて、日本に、地域社会に、対話の文化を醸成していきたいと願っています。
前任大学では、ゼミ生たちと共に、地域の高等教育機関の連盟が主催する「学生による地域課題解決提案事業」に応募・参加し、公立小学校の子どもたちに哲学対話を行いました(事業テーマ:「主体的・対話的な深い学び」の実現に寄与する哲学対話の実践)。
また、市民向けの公開講座や学校教員への研修セミナーにおいても哲学対話を行っています。